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おせち料理から知る冬の養生

投稿日:2023.12.27

気づけば年の瀬。あと少しで新しい年を迎えます。皆さん、お正月はどんな料理を食べますか?

   

日本には「おせち料理」という食文化があります。「1年を健康で幸せに暮らせますように」という願いを込めて、1年の最後につくり、1年の最初に食べる料理。最近は形式的になりがちですが、伝統的なおせち料理には先人たちから受け継いだ「食の智慧」が詰まっています。今日は、その一部をご紹介したいと思います。

 

おせち料理には、基本の祝い肴三種というものがあります。「黒豆」「数の子」「田づくり(又はたたきごぼう)」が一般的で、関東から北では「田づくり」、関西では「たたきごぼう」が多いと言われますが、基本的にはその土地のものを入れるので、海の近くでは「田づくり」、山の方では「たたきごぼう」が多いかもしれません。

   

たたきごぼうは、胡麻をすって調味料と合わせたところに、茹でたごぼうを入れ、すりこぎで叩きながら仕上げていくので「叩きごぼう」という名がついていますが、おせち料理の時は「叩き」とは書かず「多々喜」と書きます。ごぼうは大地に深く根を張ることから、多々喜ごぼうには「地に足つけて根を張って生きられますように」という願いと、「たくさんの喜びが訪れますように」という願いが込められています。このように、おせち料理には、そのひとつひとつに願いが込められているのです。

 

「黒豆」には「まめに働いて長生きできますように」という願いが込められています。薬膳では、黒豆はごぼうと共に、冬にダメージを受けやすい「腎」を補う食べ物です。抗酸化物質が豊富で、身体をサビや老化から守ります。

 

「数の子」には「子孫繁栄」の願いが込められています。数の子はにしんという魚の卵で、魚卵と聞くと「プリン体が心配」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は数の子のプリン体の量はそんなに多くありません。他の魚卵と比べてコレステロールも少なく、反対にEPAやDHAという青魚に多い身体に良い油が豊富に含まれているので、脳の健康のためにもぜひ食べたい食材です。

 

「田づくり」には「五穀豊穣」の願いが込められています。田づくりの材料である「かたくちイワシ」は、足腰の衰えを予防したり、血栓の予防にもおすすめなので、年齢を重ねた方に特におすすめしたい食材です。カルシウムが豊富なので、成長期のお子さんにもおすすめです。

   

「海老」には「腰が曲がるまで元気に生きられますように」という願いが込められています。薬膳では、海老は「腰を温める」この時期に積極的に摂りたい食材です。

 

「菊花かぶ」は、かぶに細かい十字の切り目を入れて甘酢に漬け、お花のように見せる料理で、そこには「大輪の花が咲きますように」という願いが込められています。かぶは冬が旬で、薬膳では五臓すべてを補う食べものなので、年の初めに身体を調えるのにぴったりです。

 

   

「栗きんとん」は、色が金色で縁起が良く、さらにそれを茶巾の形にととのえて「豊かさと笑顔が呼び込める」金色の福袋に仕上げます。さつまいもは、氣(身体を動かすエネルギー)を補う大切な食べ物のひとつ。中に入れる栗は疲労回復におすすめなので、年末の疲れが残っているという方は、お正月は、こたつで栗きんとんを食べてゆっくりするのがおすすめです。

 

食事は、健康な未来をつくる「自分への贈り物」です。10年後も健康でいるために「旬の新鮮なものを食べる」「身体の声を聞いて食べる」ということを意識して過ごしてもらえたら嬉しいです。来年も、皆様が健康で充実した毎日を過ごせるよう、祈っています。

 

お話しする人

荒井直子

フードコーディネーター/国際中医薬膳師/中医薬膳指導員/薬膳栄養カウンセラー
フードコーディネーターとして、TV、企業Webサイト、雑誌や書籍など幅広く活躍。
薬膳レッスンやごはん会を東京・大阪・宮城など各地で行う。